「これ?だって俺達付き合ってるんだから、手ぐらい繋ぐでしょ」

「――は!?」

いつもはクールな有紗がこれ以上ないくらい驚いた顔をしている。

「あ、有紗…?」

しばらく開いた口が塞がらないという状態だったけれど

少し冷静さを取り戻した有紗は

「琴葉…なんで黙ってたのかな?」

こわーい視線を送ってくる。

「いや、あ、あのね?」

「琴葉は…夢じゃないかと思ってたんだよね?」

彼は涼しい表情で耳元で囁く。

「――…っ…うん…」

耳に息がかかり、はずかしさから頬が真っ赤になるのがわかる。

それを沖本君と有紗は呆れ顔で見ている。

「――まあ…よかったじゃん?琴葉」

「ん…」

複雑な思いを隠して頷く。

「よかったって?」

沖本君が有紗に聞いてきた。

「琴葉は入学したときからコイツのことが好きだったからね」

「コイツって…」

あからさまに嫌な顔をする彼。

「へ?琴葉ちゃんって…龍太のこと、そんな前から好きだったの?」

「ま、まあ…」

なんだか、そんな感情を沖本君に知られて、もっと恥ずかしくなって俯いてしまった。