「琴葉ちゃーん。お願いだからそろそろ携帯の電源入れてくれよ~」

どうやら私には繋がらないとわかると沖本君に何度も電話をかけてきているらしい。


「…知らない」

昼休み、お弁当を食べながらプイッとそっぽを向く。


「…参ったなー」

沖本君の困惑した表情に胸がチクリと痛んだけれど

それでも龍太を許せなかった。

―――…チョコいらないなんて…ひどいよ。


「あらっ?今、怒ってたと思ったら、今度は泣きそうな顔してる」

有紗がバカにしたような言い草で、顔を覗き込んでくる。

「有紗、うるさい」

「こわっ…はいはい、ごめんよ」

肩をすくめてまた、お弁当を食べ始める有紗。


お弁当もなんだか味がしない気がする…。

せっかくお母さんが作ってくれたのに――…。


「有紗ー…俺にチョコは?」

沖本君が有紗にチョコをねだる。

ううん、彼だけじゃない。

学校全体がなんだか浮き足立っている。


それを羨ましく感じる――――…。