「おはよー……」

「おはよ…って、琴葉?なんか暗いわよ?」

「あー…有紗か…おはよう…んー、あんまり眠れなかったから…」

そう言って私は机に顔を伏せた。

今朝、彼に金曜のことを聞きたいと思って、学校に着いてから待っていたけど

彼の周りには相変わらずとりまきがいっぱいで、彼も私の方をチラリとも見ようとしない…。

なんだか、金曜日の出来事が夢のような気がして、有紗にも言えないまま。

「琴葉が眠れないなんて、めずらしいわねー。―――なにかあったの?」

伏せていた顔を上げて有紗を見る。

だけど、こんなこと言ったら有紗は彼のところに怒鳴り込んで行きかねない。

有紗は元カレと、彼の浮気が原因で別れているから、竹内君には実は5人彼女がいます、なんて…言えない。

有紗の世界は白か黒だけだから、そんな優柔不断に見える男を許せるはずもなく、絶対やめろって言うに決まってる。

「…別に…なにも」

「そう?」

有紗は疑いながらもそれ以上は聞いてこない。


有紗のこういうところがすごく楽だと思うときがある。


聞いてほしいときはもちろん、親身になって聞いてくれるけど、話したくないときは私が話す気になるまで待っていてくれる。

…ごめん、有紗。もう少し待って。親友の有紗には必ず話すから。



そしてまた――――

金曜日がやってきた。