「琴葉…琴葉…ごめん」

「いや…いやだよ…」


―――…考えてみれば。

私はいつだって龍太の顔色を伺ってきた気がする。

“束縛するな”“詮索するな”“嫉妬もするな”


心を開かない龍太を何度もどかしく思っただろう。


こんなに好きなのに。


聞きたい思いも。

知りたい気持ちも。

みんなみんな胸に秘めてきた。


やっと…心が通じた、想いが通じ合えたと。

そう思っていたのに―――。


こんなことって…。


「…俺さ」

龍太の低く澄んだ声が耳に流れ込んでくる。

「高校に入学した頃から…ずっと憎しみだけで生きてきた気がする…」

「……」


「高校生活はさ、それなりに楽しかった。友達もいたし、勉強をするのも全然苦じゃなかった」