玄関のすぐ横にある和室に入り、こたつのスイッチを入れる。

暖房は隣のリビングから入り込んできているので、部屋全体は暖かい。

「どうぞ、座ってください」

「ありがとう」



話…ってなんだろうか。

緊張しながら彼女の言葉を待った。

「―――…本当に懐かしいわ…いつの間にかこんな綺麗なお嬢さんになってるし…」

龍太のお母さんは懐かしむ目を細めながら私の頭を撫でる。


私自身にこの人の記憶はほとんどない、といってもいい。

ただ、あの柔らかい雰囲気、この手の優しさはどことなく、覚えている。

―――…この人はどんな想いから龍太を育てることにしたんだろうか。

それしか、本当にそれしか方法はなかったんだろうか――…。

もしも、龍太が実の両親の元で育っていたなら、今の龍太はいなかったのか。

あんな風に悩み、哀しみ、苦しみ、憎むこともなかったんじゃないか…。


「どうして…龍太を私が引き取ったんだろうって…思ってるわよね…」

今、まさに思っていたことを言われて、思わず目を見開く。

そんな私に寂しそうな微笑みを向けると

「…酷い母親よね…。聖香からは子供を奪い、龍太からは両親を奪った…」

そう言って目を伏せる。