Kiss Kiss Kiss

「夕日ちゃん いた。」

朝陽さんが 慌てて入って行った私を見て微笑んだ。

「玄関ホールのお掃除してました。」

白々しい嘘をつく。


江上さんは さっきまでの甘い声を封印して
私よりもっと白々しく仕事の顔に戻っている。


「出かけてくるね。
どうせ司はあてにならないから
ゆっくりしてなさい。」

「遅くなるんですか?」

「寝てていいよ。」


一瞬江上さんが微笑んだ気がした。

司の言う 朝陽さんの周りにいるという
美女チームの一人なのか


「いってくるね。」

悲しいのがいつも通り優しい顔した朝陽さん

私にはいつも優しい顔しか見せない

「いってらっしゃい。」


江上さんが笑顔で会釈した。

「お疲れ様でした。」


敗北感・・・・・っていうか
鼻にもかけてもらってない。


悔しい
いつか絶対その余裕をぶちまかしてやるから

玄関前を二階の吹き抜けから見ていた。
江上さんはすぐに 朝陽さんに甘え始めていた。

見す見す好きな人を奪われていく
滑稽な自分・・・・・・・。

涙が溢れて 車に乗り込んだ朝陽さんが
見えなくなった・・・・・・。