「亡くなったんだね。」

「はい。」

「そうか……。」

その人は遠い目をした。


「よくわからないんですが
母が瀬崎さんを訪ねて 助けてもらえって言ったんで……
助けるってどういう意味なんだか……。」


「入りなさい。」

「え?」

「自分に何かあったら娘を頼みますって
星子さんに言われていたんだ。」

「そうなんですか?」


母ったら 昔の恋人に私のことを頼むなんて
もしかしたら



この素敵な人が私の父親なの?


「契約書作るから……
きみがその気なら うちで働くかい?」

思いもかけない言葉だった。


「ホントですか?
これから このお店に面接に行こうと
思ってたんです…でもあんまり 気乗りしないんですけど。」


その人は私のアルバイト情報誌に目をやった。


「きみには無理だと思うな。」
そう言ってため息をついた。


キャバクラって感じじゃないのは私も
よ~~く理解してるけれど
生きていくのに必要ならと決意を決めたところだった。