「幸せだから ほっといてね。」

星子さんはそう言った。

「やっと 幸せになったから
あなたも 早く素敵な人を見つけて
温かい家庭を築いてね。」

そう笑顔で 朝陽さんに言った母だった。


「ショックだったよ。
死にもの狂いで探したんだ……。
もしかしたらなんて 考えていた自分が
滑稽でさ…何年も星子さんのことばかり
考えて……いや 星子さん以外のことは
考えたくもなかったけど……
どこかで待っててくれてるなんて期待してた
自分が情けなくて……
幸せそうにお腹を撫ぜる星子さんを見て
正直絶望したんだ。」

「でも 私には父がいないわ。
父の顔もわからない……。」


「幸せではなかったんだね。
後で知ったよ……。
星子さんから 娘をお願いしますって言われた
あの電話の時に……。
ずっと星子さんは 幸せだと思っていた。
それならよかったんだって やっと思えたけど……
最後に会った時 星子さんは一人で夕日ちゃんを
育てる覚悟をしたばかりだったって……
あの時 それを知っていたら
俺は…絶対に 星子さんを離さなかったのに……。」


「私の父はどんな人?」

「ごめん それはわからなかった。
ただ幸せにしてくれる人ではなかった。」


「そっか……。」

正直 父がわからなくてホッとしていた・・・・。