「おかあさんね 王子様を好きになったの。」

死ぬ間際 苦しがっていた母が
嘘みたいな笑顔でそう呟いた。

「え?王子様?」

「私が死んだら 会いに行きなさい。
きっと助けてくれるから……。」

「助けるって……。」

母は静かに目を閉じて


「私が もう少し若くてきれいだったら
会いに行きたかったわ。」

そう言って笑った。


母が旅立った夜 病室の片づけをしていたら
引き出しの中から 封筒が出てきた。


夕日へ


王子様の名前は



瀬崎 朝陽



私は 母の遺言通り 瀬崎を訪ねた。


大きな家だった。
庭にはたくさんの花が植えられていた。


車は三台 車庫もある。


「ここが王子様の住む 城か・・・・・。」


働きづめで 年より母は年寄に見えた。

会いに行きたかった人って どんな人なんだろう。