「何の事だよ、ただいまのチューって」
「雅貴は知らなくていいんだよ」
こんなに慌てた崇史さんは初めて見たわ。
よし、とどめだ!
「それに、耳からキスですっけ?」
そう言うと、崇史さんは呆然とした。
そして、原田さんもバツ悪そうに崇史さんを見ていた。
ふん。日頃のお返しよ。
「ほ、ほら、莉子。行こう」
「う、うん」
二人はぎこちなく手を振ると、
「また披露宴会場でね」
と言ってきた。
「何だ、あれ」
雅貴は少し呆れた顔をしながら、私に目を向けた。
「内緒の話。それより雅貴ってば、変な心配しないでよ。たったさっき、誓ったばかりでしょ?」
と言いながら、左手を上げてみせた。
そう、私たちは今日、結婚式を挙げたのだ。
青空が広がる下、ニューヨーク近郊の教会で永遠の愛を誓った。
そして隣接するレストランで、この後披露宴がある。

