ガラスの靴をもう一度



「BOSS!」

社内を歩いていると、当たり前だが英語が飛び交う。

特にニューヨーク支社には、様々な国籍の人間がいる為、公用語は英語に統一していた。

だから、日本人同士でも英語を話すんだが…。

「今は日本語でいいよ」

たまには、日本語で会話をしたくなる。

ただ、周りの人たちには言葉が通じない分、秘密の話をしていると誤解される恐れもある為、日本語での会話は、あくまでもマンツーマンの時だけだ。

「そうですか。では、遠慮なく。この資料を、ボスにお渡ししておこうと。今度赴任する川上くんの持ち分です。」

20代後半の男性社員、いずれ川上とライバルになりそうな坂下が、分厚い資料を持ってきた。

「ああ、そうか。ありがとう」

凄いな。

パラパラとめくりながら、企業名に驚く。

あの若さで、重要顧客の担当か。

それだけ、現場の信頼も厚いんだな。