ガラスの靴をもう一度



「ったく、少しは可愛いげのあるオッサンになれよ」

崇史は、わざとらしくため息をつくと、部屋を出て行こうとした。

その後ろ姿に、俺は話しかけていた。

「なあ、崇史。お前は原田と結婚するのか?」

すると、崇史はゆっくりと振り向いて、含み笑いをして答えたのだった。

「ああ。あいつも仕事を辞めるから。プロポーズするつもりだ。悪いな、お先に」

そう言うとドアを閉めたのだった。

「何が、お先にだよ」

それに、可愛いげのあるオッサン?

そんなの、気持ち悪いだけだろ?

気が付けば、ため息ばかりが出る。

部屋の窓から見える空は、雲一つない青空で、この空の続くどこかに萌がいる。

そう思うだけで、今すぐにでも探しに行きたい気分だった。