雅貴は、麻生さんを忘れる為に、私と付き合ったんじゃない。
それを、こんな風になって、ようやく分かったなんて。
「今日、来てもらったのは、萌の顔を見てニューヨークへ行きたかったからだ。ごめんな。無理矢理、呼び出して」
溢れる涙で視界はぼやける。
雅貴の顔をまともに見られない中で、必死に首を横に振っていた。
好きだよ、雅貴。
私は今でも好き。
その気持ちに嘘はないよ。
でも言えない。
もう、遅い…。
麻生さんが言っていた、本当の事を知っても、もう遅いって、この事だったんだわ。
「泣くなよ、萌。萌に泣かれると、俺は心配でニューヨークに行けれなくなるよ。今、幸せなんだろ?だったら笑えよ」
優しく頭を撫でられながら、子供の頃を思い出した。
いつも、私が泣けば、雅貴が優しく撫でてくれてたよね。

