ガラスの靴をもう一度



「そうなんだ…。大変だね」

どうして、私が側にいられないんだろう。

雅貴が大変な時に、私は会社すら辞めてしまう。

そう思ったら、込み上げる涙を止められなかった。

「どうしたんだよ、萌」

突然、泣き始めた私に、雅貴は心配そうな顔を向けた。

「私、何の力にもなれなかったね…」

「そんな訳ないだろ?俺がここまで頑張ってこられたのは、萌が側にいてくれたからだ」

「私が…?」

雅貴は優しく頷いた。

「ただ、側にいてくれるだけで、俺はどんな事でも頑張れたんだ」

「側にいるだけで?私は、本当に何も出来ていないのに…」

「何を言ってるんだよ。アメリカにいた6年間も、萌を忘れた事はなかった。確かにあの頃は、恋愛感情とは違っていたけれど、萌は誰よりかけがえのない存在だったんだよ」