社長室のドアをノックするのは、これが最後だろう。 そう思いながら、ゆっくりとノックした。 社長室に来ないで欲しいなんて、雅貴は言っていなかった。 むしろ、私から行かないと聞かされているみたいだった。 なぜなら今日、 「ここへは来たくないって聞いてる。でも一度だけ、来てくれないか?」 そう言われたから。 「はい、どうぞ」 久しぶりのこのやり取りが懐かしい。 高鳴る胸を抑え、ドアを開けると、今までずっと向けられていた優しい笑顔が、飛び込んできたのだった。 「良かった。萌が来てくれて」