ガラスの靴をもう一度



呆然とする。

ちゃんと雅貴と向き合っていれば、教えて欲しい事もちゃんと聞いていれば、こんな事にはならなかったのに…。

どうして、雅貴じゃなく麻生さんの言葉を信じちゃったんだろう。

「じゃあ、俺はもう戻るから」

「はい。お体にはお気をつけて」

雅貴、会社に戻るんだ。

今すぐにでも、ついて行きたいくらいなのに。

それは、もう許されない。

「あ、そうそう。優花も、あのバッグを直したいって言ってたよ。留め金が外れたらしい」

あのバッグって、麻生さんが持っていた、雅貴からプレゼントされたってものよね?

「そうですか。ずっと使ってくださっていますもんね。社会人になった初給料で買った、記念のバッグって言われてましたから」

やっと分かった。

麻生さんは最初から、わざと私を挑発していたんだ。

それに、まんまと乗せられたってわけか…。