オフィスに戻った私は、ただひたすら電話応対に明け暮れた。
とにかく、今は仕事に集中しなくちゃ。
「部長、私は社長と上得意先へ行きます」
電話を置き、一呼吸ついた時、麻生さんの切羽詰まった声が聞こえた。
「ああ、頼むよ。社長からも、頼まれてるんでね」
強く頷いた麻生さんは、走って部屋を出て行ったのだった。
その姿を見ていた原田さんは、感心した様に話しかけてきた。
「さすがよね、麻生さん。社長の信頼は厚いし、未来の役員候補って噂も嘘じゃないわね」
「役員候補!?役職候補じゃなくてですか?」
「それは、今すぐの目標でしょ?ゆくゆくは、女性役員の誕生!なんて、カッコイイよね?」
盛り上がる原田さんに、部長の鋭い目が向けられ、原田さんは再び仕事を再開したのだった。

