川上くんのお陰で我に返った私は、雅貴が拾い上げてくれた荷物を受け取った。
「本当に、ありがとうございます。もう、大丈夫ですので」
本当にありがとう、雅貴。
未練がましく嬉しかったよ。
少しでも顔を見られて、会話が出来て…。
今まで当たり前に思っていた事が、本当はどれだけ幸せな事だったか、やっと分かった気がする。
すると、雅貴は立ち上がって、崇史さんの方を向いた。
そういえば、崇史さんは一つも拾ってくれなかったじゃない。
いつか、絶対に“ただいまのチュー”をバラしてやるから。
「真木、袋持ってなかったか?」
「ありますよ」
崇史さんはそう言うと、小脇に抱えていた紙袋から、数冊のファイルを取り出し、雅貴に手渡した。
「可愛いもんじゃないけど、よければ使って」

