「すいません、社長…」
「いや、いいよ。それにしても、派手にぶちまけたな」
てっきり素通りされると思ったのに…。
「それが、袋の取っ手が破れちゃって…。やっぱり、紙袋の使いまわしは考えないといけませんね」
苦笑いをしながら、無残な姿に変わった紙袋を見せた。
それを見て、雅貴が一瞬固まったのが分かる。
そしてその姿に、一気に後悔が押し寄せた。
これって、“靴の事件”と重なるじゃない。
あの夜、私が持っていた紙袋の取っ手は破れた。
そして、私は落とした。
だけど、何で気付けなかったんだろう。
今日はこうやって気が付いたのに。
動きが止まった私の側へ、川上くんがやって来た。
「萌ちゃん、新しい袋を探してくるよ。社長、すいません。ありがとうございました」

