「捨てる!?そんなわけ、ないじゃないですか!」
思わず声が大きくなり、周りの白い目に小さくなる。
そんな私を見て、麻生さんは呆れた顔でこう言ったのだった。
「このブランドは、雅貴が好きなものだから、この靴がプレゼントだってすぐに分かったのよ。だからこそ、私はあなたが許せない」
「あの…、意味が分からないんですけど」
「袋の中、ちゃんと靴を見てみなさいよ」
靴?
さすがに飲食店で靴を出すわけにはいかず、袋の中を覗き込む。
すると、ヒールが欠けている事に気付いたのだった。
ローヒールの先の部分が荒く欠けている。
「どうして…?」
車かバイクにでもひかれた?
それとも、誰かにイタズラされたとか…?
あまりのショックに、しばらく声を失ってしまったのだった。

