フレンチのコースが出てきたけれど、正直堪能する気になれない。
それでも口に入れていると、麻生さんが足元に置いていた紙袋を手に取った。
「これ、花井さんのよね?」
そう言って取り出したのは、なくしたはずの靴だった。
「こ、これ…。麻生さん、どうしてここにあるんですか!?」
「驚いたでしょ?実は偶然拾ったの」
「拾った!?」
本当に、私のよね?
ブランドは間違いないけれど…。
まじまじと靴を見つめていると、麻生さんは鼻で笑った。
「半信半疑でしょ?ただ、確か花井さんが会社に持ってきていた袋と同じだったから。靴も以前履いてた事あったじゃない?だから、一応拾って雅貴に確認してもらったの」

