「そうだな。ごめん。ちゃんと考えてなかった」
「ううん。私こそ、ありがとう。それより、私の荷物ってバッグだけだった?」
「ああ、バッグだけだったけど。何でだ?何か忘れたのか?」
「ううん!何でもない。それじゃあね」
逃げる様にマンションを飛び出すと、まだ夜が明けない街へ向かった。
だけど、店には靴の忘れ物なんてなく、警察にも落とし物で届いていなかったのだった。
そのうち夜も明け、呆然と歩く私の目からは涙が溢れる。
よりによって、あの靴をなくすなんて…。
雅貴から貰ったガラスの靴なのに。
想いが通じ合った日に、貰った靴だったのに。
私はそれを、なくしてしまった。

