ガラスの靴をもう一度




「萌ちゃん!」

社長室から戻った私に、川上くんが声をかけてきた。

「あ、川上くん。どうしたの?」

「うん。萌ちゃんが気になって。良かった。何だか元気そうだね」

パーティーの夜から、川上くんがずっと心配していたのは分かってた。

でも、口に出さないでいてくれる事も分かってた。

「ありがとう。心配させちゃって、ごめんね」

苦笑いする私に、川上くんも笑った。

自分でも意外だけれど、思ったよりずっと、気持ちがスッキリしてる。

それとも、これから寂しさが込み上げてくるのかな。

「元気ならいいんだ。萌ちゃん、また誘ってもいいかな?パーティーの日、話したい事があるって言ってたろ?俺も話したい事があるから」

「うん…。いつでもいいよ」

そうだった。

雅貴と麻生さんの事があって、そのままになっていたんだ。

「だったら今夜、いいかな?少し静かな場所で話したいから」

川上くんは真剣な眼差しで、そう言ってきたのだった。