「どんなに引き止めても無理なら、萌の気持ちを大事にするよ」
「本当?」
見上げる雅貴の顔に笑顔はない。
「ああ。だけど、覚えていて欲しい。俺は萌への想いを、捨てるつもりはないから」
その言葉に、私は小さな笑顔を浮かべた。
そして、頭を下げたのだった。
「それでは社長、失礼します」
呆然と立ち尽くす雅貴を残して、社長室を後にする。
気が付いてないの?
私も、雅貴にとって縛りつける存在になってる事に。
雅貴の世界を狭いものにしてるって…。
これで私たちは、ただの幼なじみになっちゃった。
良かった。
雅貴にちゃんと、気持ちが伝えられて…。

