「痛いよ、雅にぃ」
社長室まで入ると、雅貴は振り払う様に手を離した。
「その言い方はやめろよ。それと萌、どういうつもりだ?これ、納得いくように説明しろよ」
そう言ってちらつかせたのは、私が書いた置き手紙だった。
「その言葉通りだよ」
「別れたいって事か?」
雅貴は手紙をデスクへ置くと、私を見つめた。
その目は明らかに怒りに満ちている。
まさか、ここまで怒るなんて予想外…。
「別れたいんじゃない。別れたの。私の中では、もう終わったんだから」
すると、雅貴は大きなため息をついた。
「意味が分からないよ。萌、俺は別れるつもりはない。優花の事が引っ掛かってるんだろ?萌が納得いくまで説明するから」
「もう、麻生さんの事だけじゃない。雅貴、私は雅貴を信じられなくなってる。そんな思いを、ちゃんと整理したいの」

