ガラスの靴をもう一度



「大丈夫、大丈夫」

そう自分に言い聞かせながら、社長室に向かう。

間違いなく問い詰められるだろうけど、秘書室には崇史さんがいるんだから、さすがの雅貴も理性を失う事はないと思うのよね。

深呼吸を2回して、ジャケットを正してドアをノックする。

最初は秘書室を通らないといけないから、ここは崇史さんが出てくるのだ。

だけど、今日そのドアを開けたのは…。

「入れよ、萌」

雅貴本人だったのだ。

「雅貴…じゃない、雅にぃ」

何で!?

崇史さんは!?

辺りを見回す私に、雅貴は険しい顔で言ったのだった。

「崇史はいないよ。ほら、さっさと入れ」

痛いくらいに強く、腕を引っ張られた。