雅貴が!?

「嫌よ、会わない。会いたくないって、そう伝えて」

気が付いたんだ…。

私がいない事に。

「いいのか?本当に?」

「いいの。会いたくないって、そう伝えて」

すると、ドア越しにお父さんが階段を降りる足音が聞こえた。

雅貴が来たと聞いて、一気に膨らんだ緊張もしぼんでいく。

ごめんね、雅貴。

逃げちゃった…。

せっかく来てくれたのに。

会わないって言って、ごめんね。

でも明日からまた仕事。

会議で顔を合わせる事もあるし、憂鬱だな…。

でも、自分で決めた事なんだから、弱音を吐いてる場合じゃないわ。

すると、またもノック音と共に、お父さんの声がした。

「萌、雅貴くんから預かった物があるんだが」