「はぁ~。気分が乗らない」

姿見に映る自分のオーラが、どんよりして見える。

目が腫れているのは、泣きすぎたせいだ。

すっかり外も暗くなり、気が付いたら今日も終わりに向かっている。

たまたま同じく有給休暇を取っていたお父さんからは、“仕事に行ってれば良かった”だの、“家の鍵を取り上げておけば良かった”だの、散々に言われてしまった。

お父さんの気持ちも分かるのよ。

雅貴のお父さんとは幼なじみで、雅貴は今や大企業の社長。

娘をそういう人と結ばせたいって気持ち、よく分かるんだけど…。

「仕方ないじゃない。そもそも住む世界が違ったのよ」

私はシンデレラにはなれなかった。

何もやる気がせず、部屋で一人ベッドへ寝転がっていると、ドアをノックする音と共に、お父さんの声がした。

「雅貴くんが来てるが、どうする?会いに降りてくるか?」