「何を言ってるんだ!それは…」

「それは、何よ?」

何で、お父さんが言葉を詰まらせてるわけ?

不審がる私にお父さんは、ただため息をついただけだった。

「とにかく、冷静になったら帰りなさい。萌は何か誤解してる」

「何が誤解よ。だいたい、私たちは結婚してないんだから、帰る場所はここなの!」

わざと乱暴に階段を上る私に、お父さんは負け惜しみを言ってきた。

「母さんはなぁ!もっと素直で優しい人だったぞ!」

「はい、はい。ごめんなさい。性格はお父さんに似たみたい」

負けずに返すと、さらに叫び声がした。

「あっ!お前、仕事は!?」

「今日は有給!」

ドアを勢い良く閉め部屋へ入ると、その場に崩れ落ちた。

ずっと我慢していた涙が、とめどなく溢れてくるのだった。