振り向くと、笑顔の川上くんが立っている。
「川上くん…」
「萌ちゃん?何か様子が変だよ?」
私を見た途端、川上くんの笑顔が消えた。
いけない。
顔に出てるんだわ。
「ううん。何でもないの。ごめんね、遅くなって」
「いや、いいんだよ。もう帰ろうか?疲れたろ?」
心配した川上くんは、優しくそう言ってくれた。
「ありがとう…」
良かった。
ここで愛想を振りまくには、もう気力が残っていない。
川上くんの言葉に甘えて、私たちはホテルを後にした。
夜の街はネオンで明るいのに、その明るさが、今の私には皮肉に写ったのだった。

