ガラスの靴をもう一度



気持ちに嘘なんかついてない。

そうだよね?雅貴…。

すがるように祈る私の気持ちとは反対に、雅貴は何も言わないまま、麻生さんを抱きしめた。

どうして、こんな場面を見ちゃったんだろう。

どうして、今さらこんな事になっちゃうの…?

これ以上、二人のやり取りを見たって仕方ない。

もう、傷つきたくない…。

ふらつく足取りでその場を離れ、部屋へと戻った。

さっきまでは、騒々しさが鬱陶しいと思っていたのに、今は人の多さに救われる。

「川上くん、どこだろう…」

もう、帰りたい。

だけど、帰ったら雅貴と二人きりになっちゃう。

それも嫌だな…。

それ以上に、今夜帰ってくる…?

川上くんを探して人混みを見渡していると、

「萌ちゃん!」

後ろから軽く肩を叩かれた。