ドアに映る自分を見て、思わず叫びそうになった。
「ちょっと、これつけたまま…」
前髪を留めるピンをつけたままだった。
薄くメイクをした時に、使ったんだったわ。
「もう~。可愛いピンならまだしも」
取り外すと、バッグの中へ入れる。
これをつけたまま走って来たなんて、かなり恥ずかしい。
ったく、お父さんも教えてくれたらいいのに。
と、心の中で文句を言いつつも、お父さんには心底感謝をしているのだ。
だって、本来なら知り合うはずのない雅にぃと、こんな風に仲良くいられるのは、お父さん同士も幼なじみだから。

