所々に電灯がある川沿いのこの道は、夜は薄暗くて女性の独り歩きには向いていない。
だけど、今は隣に川上くんがいる。
それだけで、心強さを感じてしまった。
「ねえ、川上くん。あれって、屋形船?」
しばらく歩くと、中心街が見えてきて、川岸には一隻の屋形船が浮かんでいた。
「そうそう。あれ、屋形船だよ。萌ちゃん知ってる?」
「うん。行った事はないけど、噂には聞いた事あるよ。確か、結構値が張るのよね」
へぇ~。
ここにあったんだ。
そんな取り留めのない話をしながら歩いていると、屋形船から見覚えのある人が出てきた。
「あっ!社長に麻生さん!?」
川上くんの言葉に、一瞬足が立ち止まってしまった。

