---川上くんが連れて行ってくれたお店は、気負いの必要のない下町風の居酒屋だった。

「ここさ、たまたま入った時に気に入って、萌ちゃんを誘おうと思ってたんだよ」

「そうだったの?ありがとう!私、こういう雰囲気好きよ」

店内は、仕事帰りのサラリーマンや、OLさんで溢れている。

カウンター席と、10席ほどの畳の席は満席になっていた。

壁には手書きのお品書きに、レトロ感たっぷりのポスターや家具が飾られている。

まるで、おじいちゃん、おばあちゃんの民家みたいな雰囲気だ。

焼鳥にお刺身を堪能しながら、今夜は雅貴の事を忘れる事にしたのだった。