「真木さん!?いえ、俺が…」

戸惑う川上くんに、崇史さんは冷静に言った。

「きみもまだ赴任したばかりだ。顔をしっかり売る事に専念した方がいい」

「分かりました…」

渋々肩を離すと、川上くんは俯く私の顔を優しく覗き込んだ。

「じゃあ、萌ちゃん。あんまり無理しないで」

「ありがとう…」

情けないな。

私、子供の頃から少しも成長していない…。

「さあ、行きましょう」

崇史さんは手を取ると、歩調を合わせて店の外へ連れ出してくれた。

その手は、意外にも温かくて、泣きそうになってしまった。