社長室は秘書室の奥にあり、必ずこの場所を通らないといけない。 もちろん、完全にドアで仕切られているけれど、大きな音なら漏れてくる。 少しの時間差で、資料をデスクへ投げつけたらしい音がした。 「こういう事です。でも、事情が分かったなら、少し社長にはお灸を据えないといけないですね」 「お灸…」 あの雅貴を、どうやってたしなめるんだろう。 崇史さんにしか出来ない事だわ。 「まったく、社長は昔から恋愛には不器用ですから」