「ねえ、春くん。なんとかさんだけなんで連れてったの?」
「あんなド級につまんねーやつよく連れてけるな」
何人にも取り囲まれていた。
「何してたの?」
「あー、えっと、俺が足にテープ巻いてる間に彼女どっか行っちゃって、特に何もしてないよ?」
爽やか全開の笑みを浮かべた。
「どこ行ったんだろう」
「さあ…、犬の散歩でもしてたんじゃない」
明らかにおかしい理由なのに、
イケメンなら何でもオッケーなのかみんな「なるほど」と納得したのだ。
鷹祢がそう言ったおかげか、それから特に質問攻めにされることはなく、
いつも通り影ライフ。
あのドSもいつもと変わりなく、一時間目はまるで私の恥ずかしい夢だったのかのように。
あっという間に四時間目になり、昼ごはんという私が嫌いな時間になった。
勿論1人でご飯を食べていた。
家に母はいなくて、弟と妹と私とお父さん。
お父さんは夜遅くまで働いているから、
ご飯や家事は私がしていて、弟は中2で妹が小5なので手がかかるわけでもないし、忙しくはない。
自分で作った手作り弁当を持って、クラスを抜けだす。
クラスや場所は自由で、廊下の階段で友達と食べる人や、外のベンチで友達と食べる人、
そして私は食べる友達もいないし、
屋上はあいてないし教室はむなしいからこうやって物置化としたほこりっぽい
使われない教室で1人で食べている訳だ。
しかし、この薄暗くてせまい
そして私だけしかいない空間はこれ以上とないぐらい安心できる。
弁当箱はタッパで、手がこっている訳でもない弁当を頬張る。
人気もない廊下なのに階段を忙しく下がってくる音がする。
そして走ってくる音。
このままではこの最高の空間が見破られてとられてしまう・・・!?