「な、……っ」 夏、と続くはずだった言葉をひっそりと 空気に溶かす。 その代わりに。夏の横顔を見つめたまま 鞄の中からカメラを取り出した。 眸の高さまで上げて、ファインダーを覗き静かにゆっくりと息を吐き出す。 シャッターボタンに乗せた指が僅かに 震えていて、少し動揺した。 まだ、まだ息は止めちゃダメ。 呼吸を乱せばいい写真は撮れない。 「……」 まだ、まだ…。 『悠?』 夏がこちらに振り向いた、その瞬間。 呼吸を止めて。 カシャッ——————…。 シャッターの音だけがその場に響いた。