『———悠』
「……、…っ!」
よく透き通る声から発せられた言葉に
私は咄嗟のことで反応が遅れる。
「な、に…いきなり…っ」
『はは、顔真っ赤。かーわい』
「う、るさい!」
一歩近付いてくる夏に一歩後退する私。
その様子を見た夏はここで意地の悪さを
発揮し、私が逃げるよりも先にその長い足
で私との距離を一気に詰めてきた。
「な、…っ」
目の前に立った夏は遠くで見るよりも
遥かに綺麗で…いや、男の子に綺麗って
表現はおかしいかもしれないけれど。
でも、彼にはその言葉がよく合った。
『なに?魅とれちゃった?』
「……魅とれてません」
ひとつ、嘘をつく。
でも
『ふーん?』
にやにやと笑う夏。
「(見透かしてるくせに…)」
「性格悪い」
『ありがとう』
…褒めてないし。

