陽だまりに猫





『南波さんっておもしろいね』


喉奥でクックッと笑いながら私に
近付いてくる彼に警戒心を強める。


「…褒められてる気がしない」

『えー、褒めてるよ』


名前も知らない彼は困ったように
苦笑いを溢す。


『春日 夏希』

「は?」


カスガ ナツキ?


『春日 夏希だよ。南波 悠さん』


嗚呼、名前か。


突然告げられた彼の名前はなんだか昔から
知っていたみたいに私の中にスッと
入り込んでいった。



———…春日 夏希


心の中で呟いてみる。

不思議と心が温かくなるこの感情の名前をこの頃の私はまだ知る由もなくて。


これが『恋』だとわかるのは、
まだ先の話。





「夏」


一言、そう言えば一瞬驚いた顔をして
何度か瞬きをした彼だけど。



『イイね。それ』



すぐにその表情は
満足そうに眸を細めて微笑んだ。