———HR開始から12分経過。
『葉山中から来ました橘千紗でぇす。
趣味はぁ…』
…嗚呼、本当に帰りたい。
ピンクのルージュが塗られた唇から最初
が肝心と言わんばかりに猫なで声を出す
女の子を見つめる。
この状況を説明すると。
熱血というか体育会系というか。
まあ、そんな担任から発せられた言葉。
『じゃあまずは、自己紹介だ!
出席番号順に回していくぞ!! 』
最早この時期の恒例となっているそれ。
その一言に心底帰りたくなったのは
言うまでもない。
「(自己紹介とか、本当に嫌い)」
嫌い、と言うか苦手と言うか…
やっぱり嫌い。
この、ただ自己紹介をしているだけなのに
異様な盛り上がりを見せるクラスメートを
冷めた目で見つめることしか出来ない。
何がそんなに楽しいの、どこにそんなに
盛り上がれる要素があるの…。
うだうだと心の中で悪態をついていれば
『はい、次ー。えっと、南波だな』
とうとう訪れた担任からの死刑宣告。
というか今名前言ったよね。
自己紹介終わったよ。

