夏にキスされたあの後、掴まれた腕を
振り払ってここまで走ってきた。
今思えば
「(あそこは、中庭だった…)」
一緒に講義を受けていた彼女たちの話を
今になって思い出す。
夏の…ことだったんだ。
息を整えながらふらふらとした足どりで
公園に設置されたブランコに座る。
ギィギィと鉄の錆びた音が響いて
顔をしかめた。
「昔はこんな音、鳴らなかったのに…」
何故だか、そのことがとても悲しくて。
止まる気配を見せない涙。
唇を噛みしめて、空を見上げる。
青い、青い。どこまでも続く青い空に
「涙、止まらないなあ…」
言の葉は溶けた。

