強引に、押し付けられる唇。

ひやり、と冷たい唇に背筋が痺れる。が
気まぐれな猫のように細められた眸は
楽しそうに、くすりと笑った。



「…っ、や…」



グッと夏の身体を押すけど、到底力では
敵うはずもなくて。


それどころか、僅かに開いた唇の隙間から
唇と同様に冷たい夏の舌が浸入してきて
私の口内を荒らす。


逃げようとしても、それを簡単に許す
ような夏ではなくて。

深くなるキスと自分の唇からもれる吐息に
ゆるやかに追い詰められた。




「(どうして…、キスなんか)」



そっと最後に下唇を舐めて離れた夏。
近距離であの綺麗な瞳を見つめる。



『先輩には、秘密』

「っ、」


しー、と人指し指を口に当てて微笑む夏。


莉央への裏切り。夏との秘密。



『…泣かないでよ、…悠』


「泣いて…ない…っ」


言われて初めて気付いた。

————…私、泣いているんだ。



『嘘つき』