『ニャー』

「わ、」


ベンチの陰からそっと姿を見せたのは
小さな猫だった。


「猫…、迷いこんじゃったのかな?」


そっと近付くと足元にすり寄ってくる猫に
自然と笑みを浮かべる。


「人慣れしてる。可愛い」


撫でてやると気持ち良さそうに
身をよじる姿は本当に愛らしい。


「あ、そうだ」


今日はカメラを持って来ていたんだった。
そう思い出して鞄から取り出す。


ファインダーを覗いてシャッターを
少し強めに押した。

パシャッと聞き慣れた音が響く。


うん、いい写真が撮れた。


そのままカメラを首に提げて
猫を抱き上げる。

なんの抵抗もなしにされるがままの猫を
見ていたら可笑しくて笑ってしまった。


「ふふ、大人しいね。もしかして飼い主が
いたりする?」

『ニャアー』

「返事した」


そんな、なんてことない鳴き声に
感動してみたり。