今だ目の前で言い合いをしている2人に
少し強引に話しかける。


「あの…!さっきの…」


ダメだ。語尾が消えていく。

最早なぜ私がこうなっているのかさえ
わからなくなってきた。帰りたい。


『あ、ごめんね。話進まないよね』

「(気付いてくれた…)」


また後ろに振り向いてくれた彼女たちに
ほっと息を吐く。


「えっと、それで…?」

『いや、南波さん中庭にいた人のこと
知ってるのかなあって』

「中…庭?あ、かっこいいって言ってた」

『そうそう!その人!!
ねえ、知ってる!?知り合い!?』

「うーん、顔もよくわからないかも」

『あー、そうなんだ。反応したから
心当たりあるのかと思ったのに』


反応…か。
あれは本当に無意識。

ただ、"陽に透けた猫っ毛"ってだけで
思わず言葉が出てしまった。





『誰か、知り合いと勘違いした?』


「っ…」


彼女の何気ない一言が私の呼吸を止めた。