『ねぇねぇ、さっきの人見た!?』

『さっき?』

『ほら!この教室来る前に中庭通った
じゃん!で、中庭のベンチにいた!』

『あー、あの人』


前の席で女の子が2人。小声、と言うには
少し大きい声で話していた。


私はルーズリーフに視線を落としながら
なんとなく、聞こえてくる会話に
耳を澄ませる。


『かっこよかったよね』

『ね!あんな人いたんだって感じ』

『名前なんて言うんだろ。
噂になっててもおかしくないと思うのに』


どうやら、大学内で。細かく言えば中庭で
かっこいい人がいたらしい。


なんだろう。そういう話題に疎いせいか
なぜそんなことで盛り上がれるのか私には
よく理解できない。


勝手に盗み聞きしているのにこんなこと
思うのは失礼だと思うけど。


そんな私に気付くはずがない彼女たちは
会話を続けた。