私が唯一知っているのは、
『高校生』の時の彼。
『大人になった』
彼のことなんて何一つ知らない。
あれから月日は経ち、私が知っている彼は
きっともう、どこにもいない———…。
『今』の彼を知らない私が、
彼についての何かを想像するなんて。
「馬鹿みたい…」
『え?』
ぼそり、無意識の内に呟いていた言の葉を
微かに聞き取ったらしい莉央がこっちに
戻ってきながら反応した。
軽く頭を横に振り
「なんでもない」
『でも今…』
なんでもないよ。そうもう一度同じ言葉を
繰り返した私を見て、莉央はそれ以上の
追求はしてこなかった。

