『…悠』


冷たい空気を震わすように響いた声に、
そっと顔を上げた。


『悠、好きだよ』


「うん…私も」


声は、震えていないだろうか。

こんな時でさえも私はそんなことを
考える。


ゆっくりと手を引かれ彼との距離が
近くなる。


ぎゅっ、と。
嗚呼、今抱き締められてるのか。
そう理解するのに随分と時間がかかった。


いつもと変わらぬ早さで鼓動を繰り返す
心臓はドクン、ドクン。と
生きてることを主張するかのように鳴る。


ただ、それだけ。