そっと離れた莉央の手の温もりの代わりに
瞼にひとつ、キスが落とされる。


彼のシトラスの香りが濃くなった瞬間
すぐに消えてなくなってしまったそれ。


私から離れた莉央はドアの方に
身体を向けていて、それで。


「っ…」



一瞬、ほんの一瞬だけ。
莉央の後ろ姿に『彼』を見た。



脳裏に焼きついてしまった面影は、
じわじわ私を侵略して、呼吸を止める。


ドアが閉まる最後の最後まで、
私はそこから目を離せなかった。