陽だまりに猫





『ほら、先輩。悠嫌がってる』

『それお前に対してじゃない?』

『は?先輩でしょ』


尚もぎゃんぎゃんと私の頭の上で騒ぐ
迷惑極まりないこの人たちに、



「2人ともうるさい!」

『悠?』

『南波…?』


とうとう私がキレた。


「夏、くっつき過ぎ!離れて!」

『あ…はい』

「東先輩もいい加減夏の挑発に乗らないで下さい!」

『ははは、ごめんごめん』


ほんっと、もうっ!!
この人たちといるとロクなことがない!


『悠、怒った?ごめんね?』


顔を覗き込んで今さらご機嫌を取りに来る夏を睨んでやる。だから夏を連れてくるのは嫌なんだ。


私は部室を目指して後ろを振り返らず
ひたすら前だけを向いて歩き出した。


『ねえ、悠。ごめんってば』


後ろをついてくる足音が廊下に響く。


『ねえー、悠ってば』

「静かにしてて」

『許してくれる?』

「許さない」


困ったように笑う吐息が空気を伝う。


『悠』


囁くように呟かれた声に背筋がぞくりと
痺れて、気付いた時には夏に腕を引かれ
身体が後ろに傾いていた。


トン、と小さな衝撃は夏の身体に収まる
形で吸収されて伸びた腕が私を拘束する。


「離して」

『いーや』

「離せ」

『許してくれる?』

「……」


嗚呼、この男は。


『悠?』

「っ…、ゆ…るすから…離してっ」


耳元であんな声。狡い、狡い、狡い。


『そ、よかった』







何もかも、狡い。